2022年12月20日
軍用無線機 AN/PRC-119について(2023年1月更新)
2024.2.12更新
界隈でよく耳にする119と呼ばれる、軍用無線機AN/PRC-119( )であるが、今回はシステムの概要から構成についてを簡単に説明する。
AN/PRC-119のシリーズはSingle Channel Ground and Airborne Radio System (SINCGARS)のマンパック構成の名称であり、アンテナやハンドセット等の機器がそろって初めてAN/PRC-119となる。
・SINCGARS
ベトナム戦争以降に使われてきたAN/PRC-25/77や同年代のVRCシリーズは経年と共に対ジャミングや秘話性能に課題や問題が多く、解決が必要だった。
そこで開発されたのがSINCGARSである。
SINCGARSは対ジャミング機能(Electronic Counter-Counter Measures, ECCM)である周波数ホッピング、VINSONセキュアボイスシステム(秘話装置)を搭載した次世代無線システムとして開発された。
構成としては『RT-』の記号から始まる送受信機を中心に、アンテナやアンプ、マウント等を組み合わせることによって、航空機向けのARCシリーズ、主に車両に搭載させるVRCシリーズ、携行型のPRCシリーズと名称が変わる。
・AN/PRC-119( )シリーズ
SINCGARSの携行型マンパック構成がPRC-119である。
その中心である送受信機は型式的には二種類存在し、その組み合わせによりバージョンが無番からA~Fまで存在する。
RT-1439/PRC (AN/PRC-119)
日本国内で一番流通しているモデルであり、PRC-119と聞いてイメージする機種である。
分かりやすい特徴としては、AN/PRC-25/77シリーズより横幅が小さく、周波数表示が赤色のセグメント表示の物がRT-1439である。
SINCGARSマンパック構成の一番初めのモデルであり、周波数ホッピング機能とデータ暗号化機能を搭載しているが秘話機能は搭載されていない。
RT-1439/PRC (AN/PRC-119)
RT-1523()~(F) (AN/PRC-119()~(F))
RT-1493に秘話機能を付加したモデルであり、RT-1439と比べRT-1523()~(D)は秘話装置を内蔵した分10㎝程度横幅が大型化した。
RT-1523(E~F)は半導体進化やS/W化により逆に10㎝程度横幅が小型化した。
RT-1523A(AN/PRC-119A)
RT-1523E(AN/PRC-119E)
サイズ感比較
上から、RT-841、RT-1439、RT-1523
左から、RT-1439、RT-841
・AN/PRC-119(RT-1439)主要諸元
周波数 :30〜87.975MHz
チャンネル数 :2,320チャネル
送信出力 :HI 4W / MID 0.25W/ LO 0.05W
サイズ・重量 :9×23×38㎝ 7.8㎏ (参考 RT-841/PRC-77 10×28×29㎝ 6.2㎏)
30〜87.975MHzの広帯域で2,320チャネルをカバーする周波数ホッピング無線機である。
周波数ホッピング機能を使用するには、ローディングデバイスであるMX-18290またはMX-10579のいずれかを使用して、暗号化キーをローディングする必要がある。しかし、暗号化キーを入手するのはほぼ不可能であり実質的にホッピング機能を使用することはできない。
また、音声暗号化(COMSEC)には、秘話装置であるKY-57が必要となるが、こちらも動作状態での入手は不可能である。
無線機にはセルフテスト機能があり、FCTNスイッチをTST位置にすると無線機は自己診断を実行する。テストに合格するとディスプレイにGOODが表示される。それ以外の場合は、以下のFAILメッセージが表示される。
FAIL# 故障内容
1 内部送受信ユニット故障 受信系
2 内部送受信ユニット故障 データ送信系
3 内部送受信ユニット故障 ECCM系
4 内部通信障害
5 秘話規約データなし
6 システム接続不良(SNAP / FHMUX)
7 内部伝送制御不良
8 内部伝送制御不良
マンパック構成
RT-1439 送受信機
AS-3683 ショートアンテナ
AS-4266 ロングアンテナ
H-250 ハンドセット
HRCRD リモートハンドセット
CY-8523バッテリーボックス
CY-8523Aバッテリーボックス
CY-8523Bバッテリーボックス
CY-8523Cバッテリーボックス
BA-5590/U 使い捨てバッテリー
BB-390 充電式バッテリー
BB-590 充電式バッテリー
BB-2590 充電式バッテリー
キャリーケース
•キーパット種類について
RT-1439、RT-1523に使用するキーパットは数種類あるが、その違いはメンテナンス性である。
このキーパッドは経年により無反応、もしくは連続反応(00000など押した以上に入力される)するなどの不具合が発生する。
これらは分解及び清掃で改善するが、その分解が容易であるか否かが大きな変化である。
初期型では隙間に刃物などを滑り込ませてぶんかいするが、-5、-6といった後期型のタイプはねじ止めに変更されており容易に分解する事が可能である。
A3012985-2 RT-1439用
A3012985-5 RT-1523用
A3012985-6 RT-1493用改良型
※順次更新予定
https://twitter.com/SBI_Corp
界隈でよく耳にする119と呼ばれる、軍用無線機AN/PRC-119( )であるが、今回はシステムの概要から構成についてを簡単に説明する。
AN/PRC-119のシリーズはSingle Channel Ground and Airborne Radio System (SINCGARS)のマンパック構成の名称であり、アンテナやハンドセット等の機器がそろって初めてAN/PRC-119となる。
・SINCGARS
ベトナム戦争以降に使われてきたAN/PRC-25/77や同年代のVRCシリーズは経年と共に対ジャミングや秘話性能に課題や問題が多く、解決が必要だった。
そこで開発されたのがSINCGARSである。
SINCGARSは対ジャミング機能(Electronic Counter-Counter Measures, ECCM)である周波数ホッピング、VINSONセキュアボイスシステム(秘話装置)を搭載した次世代無線システムとして開発された。
構成としては『RT-』の記号から始まる送受信機を中心に、アンテナやアンプ、マウント等を組み合わせることによって、航空機向けのARCシリーズ、主に車両に搭載させるVRCシリーズ、携行型のPRCシリーズと名称が変わる。
・AN/PRC-119( )シリーズ
SINCGARSの携行型マンパック構成がPRC-119である。
その中心である送受信機は型式的には二種類存在し、その組み合わせによりバージョンが無番からA~Fまで存在する。
RT-1439/PRC (AN/PRC-119)
日本国内で一番流通しているモデルであり、PRC-119と聞いてイメージする機種である。
分かりやすい特徴としては、AN/PRC-25/77シリーズより横幅が小さく、周波数表示が赤色のセグメント表示の物がRT-1439である。
SINCGARSマンパック構成の一番初めのモデルであり、周波数ホッピング機能とデータ暗号化機能を搭載しているが秘話機能は搭載されていない。
RT-1439/PRC (AN/PRC-119)
RT-1523()~(F) (AN/PRC-119()~(F))
RT-1493に秘話機能を付加したモデルであり、RT-1439と比べRT-1523()~(D)は秘話装置を内蔵した分10㎝程度横幅が大型化した。
RT-1523(E~F)は半導体進化やS/W化により逆に10㎝程度横幅が小型化した。
RT-1523A(AN/PRC-119A)
RT-1523E(AN/PRC-119E)
サイズ感比較
上から、RT-841、RT-1439、RT-1523
左から、RT-1439、RT-841
・AN/PRC-119(RT-1439)主要諸元
周波数 :30〜87.975MHz
チャンネル数 :2,320チャネル
送信出力 :HI 4W / MID 0.25W/ LO 0.05W
サイズ・重量 :9×23×38㎝ 7.8㎏ (参考 RT-841/PRC-77 10×28×29㎝ 6.2㎏)
30〜87.975MHzの広帯域で2,320チャネルをカバーする周波数ホッピング無線機である。
周波数ホッピング機能を使用するには、ローディングデバイスであるMX-18290またはMX-10579のいずれかを使用して、暗号化キーをローディングする必要がある。しかし、暗号化キーを入手するのはほぼ不可能であり実質的にホッピング機能を使用することはできない。
また、音声暗号化(COMSEC)には、秘話装置であるKY-57が必要となるが、こちらも動作状態での入手は不可能である。
無線機にはセルフテスト機能があり、FCTNスイッチをTST位置にすると無線機は自己診断を実行する。テストに合格するとディスプレイにGOODが表示される。それ以外の場合は、以下のFAILメッセージが表示される。
FAIL# 故障内容
1 内部送受信ユニット故障 受信系
2 内部送受信ユニット故障 データ送信系
3 内部送受信ユニット故障 ECCM系
4 内部通信障害
5 秘話規約データなし
6 システム接続不良(SNAP / FHMUX)
7 内部伝送制御不良
8 内部伝送制御不良
マンパック構成
RT-1439 送受信機
AS-3683 ショートアンテナ
AS-4266 ロングアンテナ
H-250 ハンドセット
HRCRD リモートハンドセット
CY-8523バッテリーボックス
CY-8523Aバッテリーボックス
CY-8523Bバッテリーボックス
CY-8523Cバッテリーボックス
BA-5590/U 使い捨てバッテリー
BB-390 充電式バッテリー
BB-590 充電式バッテリー
BB-2590 充電式バッテリー
キャリーケース
•キーパット種類について
RT-1439、RT-1523に使用するキーパットは数種類あるが、その違いはメンテナンス性である。
このキーパッドは経年により無反応、もしくは連続反応(00000など押した以上に入力される)するなどの不具合が発生する。
これらは分解及び清掃で改善するが、その分解が容易であるか否かが大きな変化である。
初期型では隙間に刃物などを滑り込ませてぶんかいするが、-5、-6といった後期型のタイプはねじ止めに変更されており容易に分解する事が可能である。
A3012985-2 RT-1439用
A3012985-5 RT-1523用
A3012985-6 RT-1493用改良型
※順次更新予定
https://twitter.com/SBI_Corp
2021年11月26日
軍用無線機 PRC1077について(2023年4月更新)
2023年4月更新
PRC1077を調達したので簡単にレビューをしたいと思います。
まず、説明文中にAN/PRC-77とRT-841出てきますが、これはアンテナやハンドセット等のマンパックに必要なオプションが全て付いている場合→ AN/PRC-77
何もついていない無線機本体のみ→ RT-841/PRC-77
というように、使う目的や構成、使用場所によって名称が変わります。
今回ご説明するPRC1077は無線機本体のみで、対比としてはRT-841/PRC-77となりますので、その点をご理解いただきお読みいただければと思います。
•基本性能
PRC1077
メーカー:DATRON(旧TRANSWORLD)https://www.dtwc.com/
周波数:30MHz~87.975MHz FM
25KHzステップ
送信出力:LO 0.5W/MED 2W/HI 5W
ノイズ/トーンスケルチ切替可
9chプリセット可能
PRC1077はRT-841/PRC-77と比べ基本性能は全て上回りオプションが全て共通で、かつ軽量です。(RT-841比-1.6kg)
本機は米軍では正式採用されている無線機ではなく、第三国向けの供与・輸出に使われております。
(以下、推測含む)米国はAN/PRC-25・77の時代から同盟国や友好国に対して無線機の供与・輸出を実施していました。
その支援の近代版としてPRC1077が選定され、各国に供与・輸出されている物と考えられます。
本機にNSN(米国の連邦補給システムで調達される品目に対して割り当てられている管理番号)が振り分けられている事もその理由の一つです。
AN/PRC-25・77と完全互換があるため今まで25・77を使用していた国でもスムーズに無線機の近代化がはかれるメリットもあります。
モロッコ軍での使用例
インドネシア軍での使用例
その他、タイ軍、ベトナム軍、アフガニスタン軍などで採用。
内部はRT-841/PRC-77と比べると機械的部分はほぼなく、数個の大型モジュールで構成されています。
細かいところを見ると部品や配線材料は全てMIL規格品ではなく、一部に市販品と同じ物や材料が使用されていることが分かります。
以上の事からPRC1077は、設計当初から主に輸出や供与を目的としていた無線機なのではないかと推測されます。
技術が進歩した今、1960年代設計で機械部品満載のRT-841を作るより、民生品を使うCOTS(商用オフザシェルフ)の観点からも部品や材料の規格を緩和し、内部は基板化したモジュールを数個乗せるだけにすれば安価に友好国支援ができる、そんな思惑があったのではないかと思われます。
米軍に正式採用されていないので『米軍装備』という観点からすると微妙ではありますが、無線機としては軍用としてもアマチュア無線機としても大変使い勝手が良い無線機です。
以下はマニュアルからの引用となります。
●PRC1077の概要
PRC1077は軍用VHF無線機の代表とも言えるRT-841(AN/PRC-77)の代替品として設計された丈夫で高性能な無線機である。
PRC1077はRT-841/PRC-77に比べて送信出力の向上、周波数範囲の拡張、10個のチャンネルプリセット機能を備えている等いくつかの改善点があり、5Wまたは50Wの出力でマンパック、車載、および地上設置の構成が可能である。
PRC1077は既存のVRC-64およびGRC-160車両無線システムに統合することも可能であり、RT-841/PRC-77の構成システムと完全に互換性がある無線機である。
●AN/PRC-25・77のユーザー向けの特記事項
1. PRC1077は、RT-841/PRC-77を使用するシステムで使用するように設計されています。 PRC1077は、すべてのPRCアクセサリと完全に互換性があり、同じバッテリー、アンテナ、ハンドセット、車両マウント、リピーターケーブルなどが使用可能です。
2. PRC1077の本体ケースとバッテリーボックスはRT-841/PRC-77と交換可能です。しかし無線機の内部設計は完全に異なり、内部スペアパーツとサービス手順は同じではありません。
3. PRC1077はモダンなデザインで、RT-841/PRC-77にはない機能を備えています。 RT-841/PRC-77では次の機能は使用できません。
A.76〜88MHzの範囲の周波数。
B. 25kHzステップ周波数切替機能。(RT-841は50KHzステップ切替)
C.ノイズ作動スケルチ。(RT-841はトーンスケルチのみ搭載)
D.送信、受信周波数の個別設定機能。(RT-841は送受信共に同一周波数)
4. PRC1077と比較すると、RT-841/PRC-77には次のものがありません。
A.10チャンネルのメモリ機能
B.高、中、低の送信出力の切替
●年代による違い
PRC-1077は1990年代に登場してから現在でも生産されている。
動作は同じであるが、内部の仕様が年代と共に変更されており初期型と最新型で本体色や内部仕様が大きく異なる。
上から順に初期型とそれ以降の個体。
明らかな色の違いがある。
こちらは下から順に初期型とそれ以降。
初期型には動作時間計まで取り付いている。
また、近年の型では線材の色まで無くなり徹底的なコストダウンが行われている様子。
オレンジ色が初期型、下の緑が近年の型である。
このようにLEDバックライトの色も違う。
モジュールに関しても内部回路は大きく変わっているものの、互換性は確保されているようである。
PRC1077を調達したので簡単にレビューをしたいと思います。
まず、説明文中にAN/PRC-77とRT-841出てきますが、これはアンテナやハンドセット等のマンパックに必要なオプションが全て付いている場合→ AN/PRC-77
何もついていない無線機本体のみ→ RT-841/PRC-77
というように、使う目的や構成、使用場所によって名称が変わります。
今回ご説明するPRC1077は無線機本体のみで、対比としてはRT-841/PRC-77となりますので、その点をご理解いただきお読みいただければと思います。
•基本性能
PRC1077
メーカー:DATRON(旧TRANSWORLD)https://www.dtwc.com/
周波数:30MHz~87.975MHz FM
25KHzステップ
送信出力:LO 0.5W/MED 2W/HI 5W
ノイズ/トーンスケルチ切替可
9chプリセット可能
PRC1077はRT-841/PRC-77と比べ基本性能は全て上回りオプションが全て共通で、かつ軽量です。(RT-841比-1.6kg)
本機は米軍では正式採用されている無線機ではなく、第三国向けの供与・輸出に使われております。
(以下、推測含む)米国はAN/PRC-25・77の時代から同盟国や友好国に対して無線機の供与・輸出を実施していました。
その支援の近代版としてPRC1077が選定され、各国に供与・輸出されている物と考えられます。
本機にNSN(米国の連邦補給システムで調達される品目に対して割り当てられている管理番号)が振り分けられている事もその理由の一つです。
AN/PRC-25・77と完全互換があるため今まで25・77を使用していた国でもスムーズに無線機の近代化がはかれるメリットもあります。
モロッコ軍での使用例
インドネシア軍での使用例
その他、タイ軍、ベトナム軍、アフガニスタン軍などで採用。
内部はRT-841/PRC-77と比べると機械的部分はほぼなく、数個の大型モジュールで構成されています。
細かいところを見ると部品や配線材料は全てMIL規格品ではなく、一部に市販品と同じ物や材料が使用されていることが分かります。
以上の事からPRC1077は、設計当初から主に輸出や供与を目的としていた無線機なのではないかと推測されます。
技術が進歩した今、1960年代設計で機械部品満載のRT-841を作るより、民生品を使うCOTS(商用オフザシェルフ)の観点からも部品や材料の規格を緩和し、内部は基板化したモジュールを数個乗せるだけにすれば安価に友好国支援ができる、そんな思惑があったのではないかと思われます。
米軍に正式採用されていないので『米軍装備』という観点からすると微妙ではありますが、無線機としては軍用としてもアマチュア無線機としても大変使い勝手が良い無線機です。
以下はマニュアルからの引用となります。
●PRC1077の概要
PRC1077は軍用VHF無線機の代表とも言えるRT-841(AN/PRC-77)の代替品として設計された丈夫で高性能な無線機である。
PRC1077はRT-841/PRC-77に比べて送信出力の向上、周波数範囲の拡張、10個のチャンネルプリセット機能を備えている等いくつかの改善点があり、5Wまたは50Wの出力でマンパック、車載、および地上設置の構成が可能である。
PRC1077は既存のVRC-64およびGRC-160車両無線システムに統合することも可能であり、RT-841/PRC-77の構成システムと完全に互換性がある無線機である。
●AN/PRC-25・77のユーザー向けの特記事項
1. PRC1077は、RT-841/PRC-77を使用するシステムで使用するように設計されています。 PRC1077は、すべてのPRCアクセサリと完全に互換性があり、同じバッテリー、アンテナ、ハンドセット、車両マウント、リピーターケーブルなどが使用可能です。
2. PRC1077の本体ケースとバッテリーボックスはRT-841/PRC-77と交換可能です。しかし無線機の内部設計は完全に異なり、内部スペアパーツとサービス手順は同じではありません。
3. PRC1077はモダンなデザインで、RT-841/PRC-77にはない機能を備えています。 RT-841/PRC-77では次の機能は使用できません。
A.76〜88MHzの範囲の周波数。
B. 25kHzステップ周波数切替機能。(RT-841は50KHzステップ切替)
C.ノイズ作動スケルチ。(RT-841はトーンスケルチのみ搭載)
D.送信、受信周波数の個別設定機能。(RT-841は送受信共に同一周波数)
4. PRC1077と比較すると、RT-841/PRC-77には次のものがありません。
A.10チャンネルのメモリ機能
B.高、中、低の送信出力の切替
●年代による違い
PRC-1077は1990年代に登場してから現在でも生産されている。
動作は同じであるが、内部の仕様が年代と共に変更されており初期型と最新型で本体色や内部仕様が大きく異なる。
上から順に初期型とそれ以降の個体。
明らかな色の違いがある。
こちらは下から順に初期型とそれ以降。
初期型には動作時間計まで取り付いている。
また、近年の型では線材の色まで無くなり徹底的なコストダウンが行われている様子。
オレンジ色が初期型、下の緑が近年の型である。
このようにLEDバックライトの色も違う。
モジュールに関しても内部回路は大きく変わっているものの、互換性は確保されているようである。
2021年04月02日
年代に合わせたAN/PRC-25、AN/PRC-77選び
「ナム戦装備ではAN/PRC-25(RT-505)とAN/PRC-77(RT-841)のどちらを買えば良いのでしょうか?」
「AN/PRC-25とAN/PRC-77はいつまで使えるのでしょうか?」
といった問い合わせを多くいただきますので、私なりの認識でお答えさせて頂きます。
・そもそもAN/PRC-25、AN/PRC-77とか、RT-505、RT-841とはなんであるのか
本件については、同じ軍用無線機界隈仲間のチベット工務店様の記事「AN/PRC-77 radio set とは」を参考にして頂ければと思います。
【https://infantry199.militaryblog.jp/e774229.html】
チベット工務店様には他にも軍用無線機に関する様々な記事がございますので、ご一読頂くとより軍用機器を楽しむ事ができます。
・ナム戦歩兵装備としてのPRCの選定
ベトナム戦争は1965年~1975年なので、初期の海兵隊装備などであればAN/PRC-10(A)とAN/PRC-25が対象となります。
その後、1968年5月以降からAN/PRC-77の配備が進みますが、PRC-25も1972年頃まで生産されており、両無線機はベトナム戦争期間中を通して生産と配備が並行して行われておりました。
以上の事からナム戦装備であれば、初期はAN/PRC-10、PRC-25、中期以降はAN/PRC-25、PRC-77が使えるという解釈となります。
・AN/PRC-25、PRC-77の年代による違い
製造年代の見分け方については以前の記事
【AN/PRC-25、PRC-77の製造年代の見分け方&ちょっとライセンス生産品の話しhttps://sdi.militaryblog.jp/e1038875.html】
で解説させて頂いておりますが、今回はより細かい部分までお話しさせて頂こうと思います。
今回もウンチクが長くなりますので先に結果から申し上げますと
①本体の色が焦茶色は60~70年代、深緑は70~80年代、艶消し緑は85年以降に製造、もしくは使用されていた個体。
②バッテリーボックスに圧力リリーフ弁が付いている物は72年以降に製造された、もしくは使用されていた個体。
③バッテリーボックス内部に4本のスポンジが付いている物は、80年代以降に製造された、もしくは使用されていた個体。
以上の条件から逆算し、自身の装備に合せた無線機を選べば完璧です。
以降は各項目の詳細になります。
①本体塗装色について
【上90年代、下60年代】
60~70年代 Dark Brown(焦茶色)
70~80年代 Forest Green(深緑)
85年以降 CARC 383 Green(緑)
本体の色が大きく変わるのは85年代以降、全装備に義務付けされたCARC塗装です。
85年以降に製造もしくはオーバーホールされた物は、本体やアンテナも含めて問答無用でCARCにされます。
これは古い機種(AN/PRT-4、PRR-9、AN/PRC-25)でもオーバーホールされれば、写真のように塗り替えられます。
【88年にO/HされてCARC色になったAN/PRT-4】
【内部には元の茶色が残っている】
そのため、色がCARCの物は85年以降に使う分には機種が古くとも正解と言えますが、ナム戦装備として考えた場合は存在しない色の物で微妙という事になります。
②バッテリーボックスCY-2562/PRC-25の加工有無について
【写真上が60年代、下が90年代のバッテリーボックス】
色は先程の話の通りですが、大きな違いは赤丸部の圧力リリーフバルブ(逃し弁)の有無です。
この圧力リリーフバルブが付いた経緯は、マグネシウムバッテリーBA-4386/Uは放電時に水素ガスを発生させるため、水素ガスによる爆発やガス逆流による無線機の破損、バッテリー交換時に箱が飛んで負傷するといった事象が多発しました。
【BA-4386/PRC-25 水素を出す憎い奴 80年代製品】
上記事象を受けて1972年9月に緊急改修の通達が出たことにより、1972年以降に生産された物、もしくは使用されていた物に関しては全てリリーフバルブが取り付けられております。
また、80年代に登場したBA-5598/UはBA-4386/Uの半分のサイズな為、バッテリーを支えるために中心部にスポンジが2カ所追加、合計4カ所になっています。
以上が細かい年代の判別方法となります。
年代や内容については様々お話させて頂きましたが、「無線機」として考えた場合はどこで製造されようが、何色だろうが、何が付いていようがどうでもいいとは思います。
しかし、「装備品」としてみた場合、割と単価が高いにも関わらず、色が違う、付いている物が違う、というのはかなり気になる点なのではないかと感じます。
……とは言いましたが!こんな細かい事は気にしていたら買える物も変えなくなってします。
もうとりあえずポーンと適当に買っちゃっていただきまして、RTOをやりながらどうしても気になる部分が出てきたら売り飛ばして、新たに好みの物を買えばいいと思います。
その辺は他の装備品と同じなので、是非とも無線機を手に入れて、みんなでRTOをやりましょう!
2021年02月01日
軍用無線機 AN/PRT-4の分解
ナウなヤングにバカウケのAN/PRT-4でありますが、急ぎで分解しなければならない時がよくあります。
そこで今回はAN/PRT-4の分解方法です
①チャンネル選択スイッチを取り外し、スイッチ本体を固定しているナットを取り外す。
②裏蓋を開け、内部モジュールを固定している印のネジを取り外す。
③ドライバー等により、テコの原理でモジュールを浮かす。
④分解完了です!!
こんなに簡単に分解できるのには感動します。
また、このAN/PRT-4のモジュールがこれ一つにまとまっているの事も痺れます。さすがは軍用機。
本体側にはマイク、PTT、ANT、電源コネクターが残ります。
これは防水を維持するために、分解時に必要最低限の部位だけ取るようにしているからだと思われます。
これだけ高性能な動作品が安くヤフオク等で買えますので、興味がある方は是非とも買ってみて頂ければと思います!!(布教活動)
2020年11月10日
AN/PRC-27/77のアンテナの立て方について
ショートアンテナを折って使ったりロングアンテナを伸ばし切らないで使ったりしてると、電波が飛ばない+最悪の場合は無線機が壊れます!!
アンテナはまっすぐ垂直に立てて使いましょう。
以上です。【完】
という訳で、アンテナは伸ばしましょうという話しから始まりましたが、言いたい事はほぼ伝えてしまいました。
ここからはいつも通りの予備知識です。
最近の無線の使用され方を見ると上記のように、アンテナを折ったり短くして使用している事が殆どです。
しかし、これをPRC-25/77でやると無線機に負荷が掛かり最悪の場合には壊れてしまいます。
この壊れる原理を簡単にまとめると
「送信した電力がアンテナの中で反射して無線機に戻ってしまう事で、電力が出て行かないので通信もできないし、反射してきた電力で無線機を壊す可能性もある」
と言うような感じです。
「ロングアンテナをショートアンテナと同じくらいの長さにする分には問題ないのでは?」
と言うお話しも頂きますが、これは間違いです。
ロングアンテナ(上)とショートアンテナ(下)をよく見ると、接続部分の長さが違う事がわかります。
この長い部分でアンテナベース内のスイッチが押され事により、接続されたアンテナに合わせた回路に切り替わるようになっています。
よく考えられて作られているなぁと感心しますね。
以上の事から、長さを合わせれば良いという訳ではないという事をご理解頂ければと思います。
また、このような使い方は特に危険です。
アンテナが本体に接触するような使い方です。
これは回路をショートさせている事と同じであり、即故障に繋がりますので絶対にやめましょう。
2020年11月02日
AN/PRC-77、PRC-25を合法的に使用する為に必要な事
民生機、軍用機に限らず無線機で電波を出すには、【無線従事者免許の取得】と【無線局申請】が必要です。
詳細は以外サイトにも書いておりますので、併せてご覧いただければと思います。
https://www.jarl.org/Japanese/6_Hajimeyo/6-1-8.htm
まず、兎にも角にもこれがないと話しにならない従事者免許ですが、AN/PRC-77、PRC-25を使用するには【アマチュア無線技士4級】を取得する必要があります。
遊びや趣味で使う場合はアマチュア無線技士となります。(業務で使う場合は別の免許)
アマチュア無線技士は1〜4級に分かれており、この違いは送信できる出力と周波数帯や方式によります。
今回、AN/PRC-77、PRC-25のみを使う場合には、その中でも1番簡単で取りやすい4級の取得を目指すこととなります。
というのも、AN/PRC-77、PRC-25で登録できる周波数帯は50MHz帯と呼ばれる周波数帯です。
この4級で出せる送信出力は最大20Wまでとなりますが、AN/PRC-77、PRC-25は約1.5〜5Wしか出ないので、4級で問題ないのです。
次にアマチュア無線取得の方法ですが、国家試験の一発受験と講習会受験の2種類ございます。
ぶっちゃけ、原付免許くらい簡単なので勉強すれば一発受験でも取れますが、講習会でしたらお金は余計にかかるものの2日間の講習でほぼ確実に取れます。
講習会につきましては以外URLを参照ください。
https://jard.or.jp/course/index.html
免許取得後の大まかな流れは
免許試験合格→免許申請→無線従事者免許証(いわゆるアマチュア無線免許)が手元に届く→【無線局申請】
となります。
ちなみに、申請してから従事者免許が手元に届くまでに約一ヵ月かかります。
従事者免許だけでは電波を出す事はできません。
アマチュア無線従事者免許が手元に届き次第、次に無線局申請が必要となります。
開局する手続きである無線局申請ですが、市販されている民生機の場合は、本体記載の番号を入力すれば簡単に登録できます。
この理由は民生機の場合、その通信機器メーカー(icomやstandard、KENWOODといったメーカー)が、機能や性能、型式等を国に届出して、無線機の構造をメーカーが保証しているからです。(改造してしまうと申請時と構造が変わるので再度届け出が必要になります)
しかし軍用機は誰も何も保証もしておりませんので、簡単に型式を書けば…という訳にはいきません。
そこで、無線機の検査機関に「この無線機は大丈夫だ」という確認と保証をしてもらう必要があります。
その検査機関を経由してAN/PRC-77、PRC-25を、日本の法律に適合した無線機として登録する事になるのです。
この検査機関を介しての無線局申請には「送信機系統図」と言った民生機の申請には使わない書類が必要となります。
これら書類については完全に意味不明だと思われますので、アマチュア無線従事者免許が届きましたらTwitter経由ででもご相談ください。
書き方などについてアドバイスさせて頂きます。
それら書類を書いて出せば、ニヶ月後くらいに無線局免許状が来て、晴れて無線機が使えるようになります。
以上の事から、実際に送信できるようになるまで最短でも三ヶ月はかかりますが、アマチュア無線従事者免許は一生物ですし、無線に関する法律や電波の基礎知識も学ぶ事ができます。
今までは謎の箱だった無線機が理解できるようになると、より一層愛着も湧くと言うものです。
もちろん、無線局申請時に民生機を一緒に登録すれば、他の周波数でもアマチュア無線を楽しむ事ができます。
この機会に是非ともチャレンジしてみてください!!
2020年10月14日
H-138/Uハンドセットみたいなハンドセット その2
【某オクにて】お!!H-138/Uが売ってる!?やったね!!!……H-207/Uって、なんだこれ?
という訳で手に入れたH-207/Uハンドセット。
他にも同じ形状でH-207/VRCという物もあった。
どうやらこれは主に車両の車体に設置され、車内のクルーと会話する為のシステムの一部である事が分かった。
今回はケーブルは無し、ネジ欠品、水没痕、本体ヒビ割れと…初めからハードモード感が出ていて堪らない!!
唯一の救いはPTT スイッチのゴムに切れがない事。
ここだけは切れていると補修のしようがないので。
早速一つ分解してみると……素晴らしい!!今回は二接点だ!!前回(過去ブログ、その1参照)は一接点でハンドセットとしての回路が構成できなかったので、他のハンドセットから部品取りして接点を作った。
【前回参照 接点増設】
これだけでかなりハードルが下がる。
ドンドンと分解して行くと、以前同様の謎トランスが内臓されていた。
やはり、何かしらと接続して使うにあたってインピーダンス整合させてるのであろうが、無慈悲に摘出。
スピーカーとマイク部の防水フィルムは破れていて完全死。
が、この防水フィルムはただのビニールなので、適当なビニールを切って挟んで復活!!
それにしても…このダイナミックマイクの大きいこと!
H-138/Uの特徴的なマイクユニットは、実は丸い形で、その2箇所がマイクとして開口している構造でした。
と、そのマイクの固定金具を固定するはずのヘリサートは…その台枠ごと粉砕していて…
そんな時は!ヘリサートを熱して、そのまま本体を溶かす形で埋没。
これで本体に食いつくので外れない(はず)
多少隙間はできたものの、ガッツリ固定できるようになった。
続いては……
錆てしまって大変な事になっているネジです。
新品に交換してしまえば良いのですが、インチのマイナスネジでさらに、こんな長いネジなどある筈もないので、復活させるしかない。
みんな大好きサンポール(と成分が同じ透明の奴)で錆を根こそぎ溶かして、ついでに塗装も溶かして
マンガン電池を分解して亜鉛を取り出して
サクッと亜鉛メッキします。
しっかりとメッキがのったので、これでもう錆びることはない。
そして塗装して終了となりたす。
塗装するならメッキする必要はなかったのでは?とか言う人!メッキはロマンなのでやってみたかったんだもん!!()
そんなこんなで一番手間のかかったネジをつけて、マイクとスピーカーの動作を確認して、とりあえず作業終了です。
あとは、適当なハンドセットを探してきてケーブルを部品取りしたら完成です。
それは、部品が手に入ったらいつか更新したいと思います。
という訳で手に入れたH-207/Uハンドセット。
他にも同じ形状でH-207/VRCという物もあった。
どうやらこれは主に車両の車体に設置され、車内のクルーと会話する為のシステムの一部である事が分かった。
今回はケーブルは無し、ネジ欠品、水没痕、本体ヒビ割れと…初めからハードモード感が出ていて堪らない!!
唯一の救いはPTT スイッチのゴムに切れがない事。
ここだけは切れていると補修のしようがないので。
早速一つ分解してみると……素晴らしい!!今回は二接点だ!!前回(過去ブログ、その1参照)は一接点でハンドセットとしての回路が構成できなかったので、他のハンドセットから部品取りして接点を作った。
【前回参照 接点増設】
これだけでかなりハードルが下がる。
ドンドンと分解して行くと、以前同様の謎トランスが内臓されていた。
やはり、何かしらと接続して使うにあたってインピーダンス整合させてるのであろうが、無慈悲に摘出。
スピーカーとマイク部の防水フィルムは破れていて完全死。
が、この防水フィルムはただのビニールなので、適当なビニールを切って挟んで復活!!
それにしても…このダイナミックマイクの大きいこと!
H-138/Uの特徴的なマイクユニットは、実は丸い形で、その2箇所がマイクとして開口している構造でした。
と、そのマイクの固定金具を固定するはずのヘリサートは…その台枠ごと粉砕していて…
そんな時は!ヘリサートを熱して、そのまま本体を溶かす形で埋没。
これで本体に食いつくので外れない(はず)
多少隙間はできたものの、ガッツリ固定できるようになった。
続いては……
錆てしまって大変な事になっているネジです。
新品に交換してしまえば良いのですが、インチのマイナスネジでさらに、こんな長いネジなどある筈もないので、復活させるしかない。
みんな大好きサンポール(と成分が同じ透明の奴)で錆を根こそぎ溶かして、ついでに塗装も溶かして
マンガン電池を分解して亜鉛を取り出して
サクッと亜鉛メッキします。
しっかりとメッキがのったので、これでもう錆びることはない。
そして塗装して終了となりたす。
塗装するならメッキする必要はなかったのでは?とか言う人!メッキはロマンなのでやってみたかったんだもん!!()
そんなこんなで一番手間のかかったネジをつけて、マイクとスピーカーの動作を確認して、とりあえず作業終了です。
あとは、適当なハンドセットを探してきてケーブルを部品取りしたら完成です。
それは、部品が手に入ったらいつか更新したいと思います。
2020年09月22日
AN/PRT-4 AN/PRR-9について(2023年2月更新)
2023年2月更新
今回は「ヤフオクに安く出ているけど、使えるかどうかよく分からないから買わない」というカテゴリーで有名なAN/PRT-4() AN/PRR-9についてお話ししようと思います。
話が長くなるので、まず必要な情報と結論から述べます。
①60年代にアメリカで開発された軍用無線機であり、比較的安価に入手可能。
②装備年代は60~80年代米軍で使用可能
③周波数は固定でありユーザーでは変更できない
④買うのはAN/PRT-4AとAN/PRR-9のセットにすること
⑤市販電池が使えるバッテリー変換アダプターが付いている物を買うこと
⑥購入時に周波数をAN/PRT-4() AN/PRR-9ともにアマチュア無線帯に変更を依頼する(購入と同時の場合のみ+2000円程度 53.5MHzだと仲間が増えて私が嬉しい)
⑦ヤフオクID gardchannelかgrc9から購入した場合のみ、上記料金にて周波数変更が可能
以上で伝えたいことは全てです。
以下からは補足情報です。
なお、無線に詳しくなくともある程度理解できるように、言い切る表現をしている部分がございますが、何卒ご容赦ください。
概要
本無線機は1964年から米軍により分隊間通信用として開発された無線セットである。AN/PRT-4()とAN/PRR-9で構成されており、AN/PRC-88と呼ばれることもあるが一般的ではない。
1966年以降から配備がはじまり従来のAN/PRC-25/77より小型で性能も優れていた物ではあったが、送信機と受信機が分かれている事から脱落や紛失が相次ぎ部隊での稼働率は徐々に低下した。しかし、資料によると80年代まで使用されていた事が確認されている。
使われなくなった両セットは軍で完全オーバーホールされ出番を待つこととなったが、日の目を見る事はなく90年代に数千単位で民間へ払い下げられた。今日、ヤフオク等で見るCARC塗装(艶消し黄緑色)の個体は軍でオーバーホールされた物である。
軍用無線機としては最安の分類である。周波数を変更しても13000円以下(2020年9月時点)で入手が可能でありながら、安価で送受信性能に優れた非常にコストパフォーマンスが良い無線機である。
ヤフオクでは上記より安い物もあるが動作の保証問題、周波数の変更問題、バッテリー問題の3点セットが必ず発生するので、手間と部品代を考えると全てまとめて買ったほうが安い。
通信距離は送受信環境による。例として山頂のように見通しが良ければ数十km、森の中や部屋の中のように障害が多い場合は十数mである。ちなみにサバイバルゲーム程度で使う距離であれば問題が発生することはない。
以上の内容はアンテナを完全に伸ばした状態で使用した場合であり、アンテナを伸ばし切らないで使用した場合には著しく通信距離が低下する。
機能と性能
1.AN/PRT-4 AN/PRT-4Aについて
話すだけの送信機AN/PRT-4(Portable Radio Transmitter)である。
本無線機の電源は実物電池のコネクター部分を元に改造した乾電池アダプターを使用し、市販の006P 9V電池を2つ使うことが一般的である。実運用での電池のもちは月一で使用する程度であれば数年単位で使用できるのでほぼ気にする必要はない。
本体にはチャンネルが2つある。同じ周波数の発振器が2つ実装されており、それぞれ送信出力が違う。Ch1は送信出力約0.5W、Ch2は約0.05〜0.25W(バッテリー電圧に大きく依存)であるため周波数変更は出力の高いCh1を指定すること。
購入時の初期周波数は51.0MHzである。この周波数帯はアマチュア無線の許可された周波数帯(50MHz帯と呼ばれる)であるため、無線局として登録すれば一般で使用しても法的に問題はない。しかし、当該周波数はアマチュア無線の呼び出し周波数(イメージとしては集合場所)であるため、そのまま使用するとアマチュア無線家の障害となる。そのため購入後は周波数の変更をお勧めしている。
AN/PRT-4とAN/PRT4-Aの違いはトーン機能の有無であり、Aにはトーン機能がついている。これは受信機側がトーンスケルチに対応しているかに関係してくるが、トーンスケルチがなんぞやかはさておき重要な情報としては『トーン機能が搭載されているAN/PRT-4AしかAN/PRC-25、PRC-77とまともに通信できない』ということである。
AN/PRT-4とAN/PRT4-Aの見た目は全く同じであり外観からは判断できない。そのため購入時は必ず銘版を確認してから購入すること。
オーバーホール済みのフルセットを購入すれば本体、脱落防止用ランヤード、電池ボックス(gardchannel購入の場合)が付属する。
このようにAN/PRT-4Aはコストパフォーマンスに優れた送信機なのである。
2.AN/PRR-9 AN/PRR-9(XE9)について
聞くだけの受信機AN/PRR-9(Portable Radio Receiver)のセットである。
本無線機の電源は実物電池のコネクター部分を改造した乾電池アダプターを使用し市販の単5電池を使うことが一般的である。AN/PRT-4と比べ実運用での電池のもちは悪く、月一で使用する程度でも数か月で無くなる。そのため使用後は必ず電池を抜く必要がある。
本体には固定のチャンネルが1つある。AN/PRT-4の周波数を変更した場合は合わせて変更が必要である。
購入時の初期周波数は51.0MHzである。この周波数帯については前述の通りであるので変更が必要である。
AN/PRR-9とAN/PRR-9(XE9)の違いはトーン機能の有無であり、AN/PRR-9 はノイズスケルチであるが、AN/PRR-9(XE9)にはトーンスケルチ機能がついている。AN/PRR-9は指定した周波数であればアマチュア無線機でもトーン機能の付いた軍用機でも受信が可能である。しかし、AN/PRR-9(XE9)はトーン機能の付いた軍用機しか受信できない。そのため前述したトーン機能のないAN/PRT-4は受信できない。(スケルチOFFとすれば聞こえるが、うるさい)
AN/PRR-9(XE9)は通常のAN/PRR-9に比べで小さく、消費電力が低くトーン機能搭載のため高性能である。しかし価格がAN/PRR-9の倍以上、動作電圧と電源端子がAN/PRR-9と違うため電池が作らなければならないという問題がある。そのため大きなこだわりがなければAN/PRR-9で問題はない。
オーバーホール済みのフルセットを購入すれば本体、アンテナ、脱落防止用ランヤード、電池ボックス(gardchannel購入の場合)が付属する。
このようにAN/PRR-9はコストパフォーマンスに優れた受信機なのである。
続きを読む
今回は「ヤフオクに安く出ているけど、使えるかどうかよく分からないから買わない」というカテゴリーで有名なAN/PRT-4() AN/PRR-9についてお話ししようと思います。
話が長くなるので、まず必要な情報と結論から述べます。
①60年代にアメリカで開発された軍用無線機であり、比較的安価に入手可能。
②装備年代は60~80年代米軍で使用可能
③周波数は固定でありユーザーでは変更できない
④買うのはAN/PRT-4AとAN/PRR-9のセットにすること
⑤市販電池が使えるバッテリー変換アダプターが付いている物を買うこと
⑥購入時に周波数をAN/PRT-4() AN/PRR-9ともにアマチュア無線帯に変更を依頼する(購入と同時の場合のみ+2000円程度 53.5MHzだと仲間が増えて私が嬉しい)
⑦ヤフオクID gardchannelかgrc9から購入した場合のみ、上記料金にて周波数変更が可能
以上で伝えたいことは全てです。
以下からは補足情報です。
なお、無線に詳しくなくともある程度理解できるように、言い切る表現をしている部分がございますが、何卒ご容赦ください。
概要
本無線機は1964年から米軍により分隊間通信用として開発された無線セットである。AN/PRT-4()とAN/PRR-9で構成されており、AN/PRC-88と呼ばれることもあるが一般的ではない。
1966年以降から配備がはじまり従来のAN/PRC-25/77より小型で性能も優れていた物ではあったが、送信機と受信機が分かれている事から脱落や紛失が相次ぎ部隊での稼働率は徐々に低下した。しかし、資料によると80年代まで使用されていた事が確認されている。
使われなくなった両セットは軍で完全オーバーホールされ出番を待つこととなったが、日の目を見る事はなく90年代に数千単位で民間へ払い下げられた。今日、ヤフオク等で見るCARC塗装(艶消し黄緑色)の個体は軍でオーバーホールされた物である。
軍用無線機としては最安の分類である。周波数を変更しても13000円以下(2020年9月時点)で入手が可能でありながら、安価で送受信性能に優れた非常にコストパフォーマンスが良い無線機である。
ヤフオクでは上記より安い物もあるが動作の保証問題、周波数の変更問題、バッテリー問題の3点セットが必ず発生するので、手間と部品代を考えると全てまとめて買ったほうが安い。
通信距離は送受信環境による。例として山頂のように見通しが良ければ数十km、森の中や部屋の中のように障害が多い場合は十数mである。ちなみにサバイバルゲーム程度で使う距離であれば問題が発生することはない。
以上の内容はアンテナを完全に伸ばした状態で使用した場合であり、アンテナを伸ばし切らないで使用した場合には著しく通信距離が低下する。
機能と性能
1.AN/PRT-4 AN/PRT-4Aについて
話すだけの送信機AN/PRT-4(Portable Radio Transmitter)である。
本無線機の電源は実物電池のコネクター部分を元に改造した乾電池アダプターを使用し、市販の006P 9V電池を2つ使うことが一般的である。実運用での電池のもちは月一で使用する程度であれば数年単位で使用できるのでほぼ気にする必要はない。
本体にはチャンネルが2つある。同じ周波数の発振器が2つ実装されており、それぞれ送信出力が違う。Ch1は送信出力約0.5W、Ch2は約0.05〜0.25W(バッテリー電圧に大きく依存)であるため周波数変更は出力の高いCh1を指定すること。
購入時の初期周波数は51.0MHzである。この周波数帯はアマチュア無線の許可された周波数帯(50MHz帯と呼ばれる)であるため、無線局として登録すれば一般で使用しても法的に問題はない。しかし、当該周波数はアマチュア無線の呼び出し周波数(イメージとしては集合場所)であるため、そのまま使用するとアマチュア無線家の障害となる。そのため購入後は周波数の変更をお勧めしている。
AN/PRT-4とAN/PRT4-Aの違いはトーン機能の有無であり、Aにはトーン機能がついている。これは受信機側がトーンスケルチに対応しているかに関係してくるが、トーンスケルチがなんぞやかはさておき重要な情報としては『トーン機能が搭載されているAN/PRT-4AしかAN/PRC-25、PRC-77とまともに通信できない』ということである。
AN/PRT-4とAN/PRT4-Aの見た目は全く同じであり外観からは判断できない。そのため購入時は必ず銘版を確認してから購入すること。
オーバーホール済みのフルセットを購入すれば本体、脱落防止用ランヤード、電池ボックス(gardchannel購入の場合)が付属する。
このようにAN/PRT-4Aはコストパフォーマンスに優れた送信機なのである。
2.AN/PRR-9 AN/PRR-9(XE9)について
聞くだけの受信機AN/PRR-9(Portable Radio Receiver)のセットである。
本無線機の電源は実物電池のコネクター部分を改造した乾電池アダプターを使用し市販の単5電池を使うことが一般的である。AN/PRT-4と比べ実運用での電池のもちは悪く、月一で使用する程度でも数か月で無くなる。そのため使用後は必ず電池を抜く必要がある。
本体には固定のチャンネルが1つある。AN/PRT-4の周波数を変更した場合は合わせて変更が必要である。
購入時の初期周波数は51.0MHzである。この周波数帯については前述の通りであるので変更が必要である。
AN/PRR-9とAN/PRR-9(XE9)の違いはトーン機能の有無であり、AN/PRR-9 はノイズスケルチであるが、AN/PRR-9(XE9)にはトーンスケルチ機能がついている。AN/PRR-9は指定した周波数であればアマチュア無線機でもトーン機能の付いた軍用機でも受信が可能である。しかし、AN/PRR-9(XE9)はトーン機能の付いた軍用機しか受信できない。そのため前述したトーン機能のないAN/PRT-4は受信できない。(スケルチOFFとすれば聞こえるが、うるさい)
AN/PRR-9(XE9)は通常のAN/PRR-9に比べで小さく、消費電力が低くトーン機能搭載のため高性能である。しかし価格がAN/PRR-9の倍以上、動作電圧と電源端子がAN/PRR-9と違うため電池が作らなければならないという問題がある。そのため大きなこだわりがなければAN/PRR-9で問題はない。
オーバーホール済みのフルセットを購入すれば本体、アンテナ、脱落防止用ランヤード、電池ボックス(gardchannel購入の場合)が付属する。
このようにAN/PRR-9はコストパフォーマンスに優れた受信機なのである。
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2020年08月10日
AN/PRC-68A 特定小電力無線局化 技術検討(その1)
〜前回までのあらすじ〜
AN/PRC-68Aの上物だけジャンクを調達。
全部バラして清掃したらキレイになった。
試しにポーチに入れてみたら完品にしか見えない!!
てか、見えてる部分は全部本物だから、下側に適当なフレーム付けて特小入れたら唯一無二な特小化PRC-68Aが出来上がるんじゃね??(完)
と、言う訳で訳でございまして、特小化するにあたり、そもそもできるのかの検討を進める事に。
と、その前に改造前のPRC-68Aを検証してみようかと。
まず、この本体のメーカーはsupply code(MFR)からすると、Oklahoma Aerotronics製 (22887)となっています。
しかし、PRC-68、PRC-126シリーズはMagnavox社(37695)設計なので、版権が移ったのかと思いましたが…
内部には37695の番号が様々な場所に。
どうやら
「Magnavox社製造、Oklahoma Aerotronics社納」
パターンのようでした。
86年度調達ですと既にPRC-126が納められている時期なので何故68Aを?と思いましたが
コントラクトから判別するに、空軍が後から追加発注した物のようです。
多分、ただ通信するだけであれば126程の機能は必要なかったので、安い68Aを契約したのかなぁーと思います。
知らんけど。
物としては最終ロットに近い非常に珍しい68Aではありますが、ご覧の通りのジャンクなので無慈悲に改造を進めたいと思います。
AN/PRC-68Aの上物だけジャンクを調達。
全部バラして清掃したらキレイになった。
試しにポーチに入れてみたら完品にしか見えない!!
てか、見えてる部分は全部本物だから、下側に適当なフレーム付けて特小入れたら唯一無二な特小化PRC-68Aが出来上がるんじゃね??(完)
と、言う訳で訳でございまして、特小化するにあたり、そもそもできるのかの検討を進める事に。
と、その前に改造前のPRC-68Aを検証してみようかと。
まず、この本体のメーカーはsupply code(MFR)からすると、Oklahoma Aerotronics製 (22887)となっています。
しかし、PRC-68、PRC-126シリーズはMagnavox社(37695)設計なので、版権が移ったのかと思いましたが…
内部には37695の番号が様々な場所に。
どうやら
「Magnavox社製造、Oklahoma Aerotronics社納」
パターンのようでした。
86年度調達ですと既にPRC-126が納められている時期なので何故68Aを?と思いましたが
コントラクトから判別するに、空軍が後から追加発注した物のようです。
多分、ただ通信するだけであれば126程の機能は必要なかったので、安い68Aを契約したのかなぁーと思います。
知らんけど。
物としては最終ロットに近い非常に珍しい68Aではありますが、ご覧の通りのジャンクなので無慈悲に改造を進めたいと思います。
2020年07月20日
AN/PRC-25、PRC-77の製造年代の見分け方&ちょっとライセンス生産品の話し
2023年2月一部更新
PRC-25/77の製造年代の見分け方です。
写真上は60年代、下は80年代以降です。
オーディオコネクター台の形状が違います。
次に、60年代はネジがマイナス(一部メーカーはプラスの物有り)、80年代以降は全てプラスです。
上記の例に習うとAN/PRC-25の場合は60年代製造の物が殆どですので、台凹みあり、マイナスが正しい形となります。(O/Hされた物除く)
それらにプラスして、チャンネルダイヤルの蝶ナットが77の場合は二枚羽の蝶ナットが付いていますが、25の場合は一般的によく見る形の一枚羽の蝶ナットです。
(2023年2月追記)
1966年発注のコントラクト『DA36-039AMC-10410』RCA製のRT-841/PRC-77のみ一枚羽の蝶ナットがついています。
これで「これはPRC-25と77どちらでしょーか?」の質問に終止符を打つ事ができます!
ただし、アメリカ製以外のPRC-77は上記法則は全く当てはまりません。
例えば以下写真のようなライセンス生産品(ドイツ、スペイン、ノルウェー、韓国、イラン、ヨルダン、レバノン、イスラエル、オーストラリア等)、もしくはオーバーホール品や再生品は何もかも構成がバラバラなので、上記の話しは全く当てになりませんのでご了承ください。
余談ですが昨今、日本国内に大量に出回っているライセンス品(主にドイツ製PRC-77-0)は中身がアメリカ製とは異なる部品が使われていたり、改造されているので保守性に難があります。
とは言っても、本来の77に比べてチャンネルステップも25kHzステップですし(スイッチの部分)、内部もICが多用されてたり、少し軽くなったりと2〜30000円くらいなら「アマチュア無線機として」は全然アリなとても良い物だと思います。
しかし……「米軍装備として」PRCが欲しい場合には、正確には不正解になるのかな?と思ったりします。
外観はスイッチくらいなので、遠くから見たら分かりゃしませんが、気にすると気になってしまうポイントではあります。
【追記】
保守性に難があります!!……と思っていた時期が私にもございましたが、これだけ数が出ていれば壊れた物を部品取りにもできるので、部品調達は容易かと思われます。
問題点は直す時に回路図がないのでちょっと不便な事くらいです。
以上の事から、ライセンス生産品は生産国と25kスイッチの外観を気にしなければ、コストパフォーマンス最高の軍用無線機です。
PRC-25/77の製造年代の見分け方です。
写真上は60年代、下は80年代以降です。
オーディオコネクター台の形状が違います。
次に、60年代はネジがマイナス(一部メーカーはプラスの物有り)、80年代以降は全てプラスです。
上記の例に習うとAN/PRC-25の場合は60年代製造の物が殆どですので、台凹みあり、マイナスが正しい形となります。(O/Hされた物除く)
それらにプラスして、チャンネルダイヤルの蝶ナットが77の場合は二枚羽の蝶ナットが付いていますが、25の場合は一般的によく見る形の一枚羽の蝶ナットです。
(2023年2月追記)
1966年発注のコントラクト『DA36-039AMC-10410』RCA製のRT-841/PRC-77のみ一枚羽の蝶ナットがついています。
これで「これはPRC-25と77どちらでしょーか?」の質問に終止符を打つ事ができます!
ただし、アメリカ製以外のPRC-77は上記法則は全く当てはまりません。
例えば以下写真のようなライセンス生産品(ドイツ、スペイン、ノルウェー、韓国、イラン、ヨルダン、レバノン、イスラエル、オーストラリア等)、もしくはオーバーホール品や再生品は何もかも構成がバラバラなので、上記の話しは全く当てになりませんのでご了承ください。
余談ですが昨今、日本国内に大量に出回っているライセンス品(主にドイツ製PRC-77-0)は中身がアメリカ製とは異なる部品が使われていたり、改造されているので保守性に難があります。
とは言っても、本来の77に比べてチャンネルステップも25kHzステップですし(スイッチの部分)、内部もICが多用されてたり、少し軽くなったりと2〜30000円くらいなら「アマチュア無線機として」は全然アリなとても良い物だと思います。
しかし……「米軍装備として」PRCが欲しい場合には、正確には不正解になるのかな?と思ったりします。
外観はスイッチくらいなので、遠くから見たら分かりゃしませんが、気にすると気になってしまうポイントではあります。
【追記】
保守性に難があります!!……と思っていた時期が私にもございましたが、これだけ数が出ていれば壊れた物を部品取りにもできるので、部品調達は容易かと思われます。
問題点は直す時に回路図がないのでちょっと不便な事くらいです。
以上の事から、ライセンス生産品は生産国と25kスイッチの外観を気にしなければ、コストパフォーマンス最高の軍用無線機です。
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