2020年09月22日

AN/PRT-4 AN/PRR-9について(2023年2月更新)

2023年2月更新

AN/PRT-4 AN/PRR-9について(2023年2月更新)


今回は「ヤフオクに安く出ているけど、使えるかどうかよく分からないから買わない」というカテゴリーで有名なAN/PRT-4() AN/PRR-9についてお話ししようと思います。

話が長くなるので、まず必要な情報と結論から述べます。

①60年代にアメリカで開発された軍用無線機であり、比較的安価に入手可能。
②装備年代は60~80年代米軍で使用可能
③周波数は固定でありユーザーでは変更できない
④買うのはAN/PRT-4AとAN/PRR-9のセットにすること
⑤市販電池が使えるバッテリー変換アダプターが付いている物を買うこと
⑥購入時に周波数をAN/PRT-4() AN/PRR-9ともにアマチュア無線帯に変更を依頼する(購入と同時の場合のみ+2000円程度 53.5MHzだと仲間が増えて私が嬉しい)
⑦ヤフオクID gardchannelかgrc9から購入した場合のみ、上記料金にて周波数変更が可能

以上で伝えたいことは全てです。


以下からは補足情報です。
なお、無線に詳しくなくともある程度理解できるように、言い切る表現をしている部分がございますが、何卒ご容赦ください。

概要
 本無線機は1964年から米軍により分隊間通信用として開発された無線セットである。AN/PRT-4()とAN/PRR-9で構成されており、AN/PRC-88と呼ばれることもあるが一般的ではない。
1966年以降から配備がはじまり従来のAN/PRC-25/77より小型で性能も優れていた物ではあったが、送信機と受信機が分かれている事から脱落や紛失が相次ぎ部隊での稼働率は徐々に低下した。しかし、資料によると80年代まで使用されていた事が確認されている。

 使われなくなった両セットは軍で完全オーバーホールされ出番を待つこととなったが、日の目を見る事はなく90年代に数千単位で民間へ払い下げられた。今日、ヤフオク等で見るCARC塗装(艶消し黄緑色)の個体は軍でオーバーホールされた物である。

 軍用無線機としては最安の分類である。周波数を変更しても13000円以下(2020年9月時点)で入手が可能でありながら、安価で送受信性能に優れた非常にコストパフォーマンスが良い無線機である。
 ヤフオクでは上記より安い物もあるが動作の保証問題、周波数の変更問題、バッテリー問題の3点セットが必ず発生するので、手間と部品代を考えると全てまとめて買ったほうが安い。

 通信距離は送受信環境による。例として山頂のように見通しが良ければ数十km、森の中や部屋の中のように障害が多い場合は十数mである。ちなみにサバイバルゲーム程度で使う距離であれば問題が発生することはない。
以上の内容はアンテナを完全に伸ばした状態で使用した場合であり、アンテナを伸ばし切らないで使用した場合には著しく通信距離が低下する。


機能と性能
1.AN/PRT-4 AN/PRT-4Aについて
 話すだけの送信機AN/PRT-4(Portable Radio Transmitter)である。
 本無線機の電源は実物電池のコネクター部分を元に改造した乾電池アダプターを使用し、市販の006P 9V電池を2つ使うことが一般的である。実運用での電池のもちは月一で使用する程度であれば数年単位で使用できるのでほぼ気にする必要はない。

 本体にはチャンネルが2つある。同じ周波数の発振器が2つ実装されており、それぞれ送信出力が違う。Ch1は送信出力約0.5W、Ch2は約0.05〜0.25W(バッテリー電圧に大きく依存)であるため周波数変更は出力の高いCh1を指定すること。

 購入時の初期周波数は51.0MHzである。この周波数帯はアマチュア無線の許可された周波数帯(50MHz帯と呼ばれる)であるため、無線局として登録すれば一般で使用しても法的に問題はない。しかし、当該周波数はアマチュア無線の呼び出し周波数(イメージとしては集合場所)であるため、そのまま使用するとアマチュア無線家の障害となる。そのため購入後は周波数の変更をお勧めしている。

 AN/PRT-4とAN/PRT4-Aの違いはトーン機能の有無であり、Aにはトーン機能がついている。これは受信機側がトーンスケルチに対応しているかに関係してくるが、トーンスケルチがなんぞやかはさておき重要な情報としては『トーン機能が搭載されているAN/PRT-4AしかAN/PRC-25、PRC-77とまともに通信できない』ということである。

 AN/PRT-4とAN/PRT4-Aの見た目は全く同じであり外観からは判断できない。そのため購入時は必ず銘版を確認してから購入すること。

 オーバーホール済みのフルセットを購入すれば本体、脱落防止用ランヤード、電池ボックス(gardchannel購入の場合)が付属する。

このようにAN/PRT-4Aはコストパフォーマンスに優れた送信機なのである。

AN/PRT-4 AN/PRR-9について(2023年2月更新)
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2.AN/PRR-9 AN/PRR-9(XE9)について
 聞くだけの受信機AN/PRR-9(Portable Radio Receiver)のセットである。
 本無線機の電源は実物電池のコネクター部分を改造した乾電池アダプターを使用し市販の単5電池を使うことが一般的である。AN/PRT-4と比べ実運用での電池のもちは悪く、月一で使用する程度でも数か月で無くなる。そのため使用後は必ず電池を抜く必要がある。

 本体には固定のチャンネルが1つある。AN/PRT-4の周波数を変更した場合は合わせて変更が必要である。
 購入時の初期周波数は51.0MHzである。この周波数帯については前述の通りであるので変更が必要である。

 AN/PRR-9とAN/PRR-9(XE9)の違いはトーン機能の有無であり、AN/PRR-9 はノイズスケルチであるが、AN/PRR-9(XE9)にはトーンスケルチ機能がついている。AN/PRR-9は指定した周波数であればアマチュア無線機でもトーン機能の付いた軍用機でも受信が可能である。しかし、AN/PRR-9(XE9)はトーン機能の付いた軍用機しか受信できない。そのため前述したトーン機能のないAN/PRT-4は受信できない。(スケルチOFFとすれば聞こえるが、うるさい)

 AN/PRR-9(XE9)は通常のAN/PRR-9に比べで小さく、消費電力が低くトーン機能搭載のため高性能である。しかし価格がAN/PRR-9の倍以上、動作電圧と電源端子がAN/PRR-9と違うため電池が作らなければならないという問題がある。そのため大きなこだわりがなければAN/PRR-9で問題はない。

 オーバーホール済みのフルセットを購入すれば本体、アンテナ、脱落防止用ランヤード、電池ボックス(gardchannel購入の場合)が付属する。

このようにAN/PRR-9はコストパフォーマンスに優れた受信機なのである。

AN/PRT-4 AN/PRR-9について(2023年2月更新)
AN/PRT-4 AN/PRR-9について(2023年2月更新)


3.OVERHAULED AT S.A.A.D シールについて

 AN/PRT-4、AN/PRR-9のシリーズに関わらず、上記の文字が入った無線機を時々見かける。
このSAADは、Sacramento Army Depot を意味しており、電子機器の修繕を主に行っていた軍の工場であった。(1995年3月閉鎖)
すなわち、このシールが貼り付けてある物に関しては陸軍で再生処置や修繕が行われた事を意味している。

またCARC塗装(艶消し黄緑色)の個体は軍でオーバーホールされた物であると記載したが、このCARC塗装は米陸軍省により1985年以降全ての機器に使用が義務付けられた。
そのため60年代生産の茶色の個体であっても1985年以降にオーバーホールされたものはCARC塗装となるので、時期により茶色とCARCの個体が存在する。

他にも海兵隊で再生が行われた物もあり、これらの表記は無線機のコンディションを見分ける要素にする事ができる。
AN/PRT-4 AN/PRR-9について(2023年2月更新)

2022年11月追記

以下はAN/PRT-4(左)とその電力増幅器であるAM-4763/PRT-4(XE-1)を取り付けた物(右)である。
AN/PRT-4 AN/PRR-9について(2023年2月更新)
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このAM-4763/PRT-4は試作品を示すXE-1が記載されており試験的に製造されたもののようである。
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これらを取り付けることにより、出力が最大2Wまで増幅する。
本体スイッチによりアンプ入り切りを切り替える事ができる。
バッテリーは本体用に一個、アンプ用に二個使用する。




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Posted by メガネさん at 13:38│Comments(0)軍用無線
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