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Posted by ミリタリーブログ at

2022年12月20日

軍用無線機 AN/PRC-119について(2023年1月更新)

2024.2.12更新


界隈でよく耳にする119と呼ばれる、軍用無線機AN/PRC-119( )であるが、今回はシステムの概要から構成についてを簡単に説明する。

AN/PRC-119のシリーズはSingle Channel Ground and Airborne Radio System (SINCGARS)のマンパック構成の名称であり、アンテナやハンドセット等の機器がそろって初めてAN/PRC-119となる。

・SINCGARS

ベトナム戦争以降に使われてきたAN/PRC-25/77や同年代のVRCシリーズは経年と共に対ジャミングや秘話性能に課題や問題が多く、解決が必要だった。
そこで開発されたのがSINCGARSである。
SINCGARSは対ジャミング機能(Electronic Counter-Counter Measures, ECCM)である周波数ホッピング、VINSONセキュアボイスシステム(秘話装置)を搭載した次世代無線システムとして開発された。
構成としては『RT-』の記号から始まる送受信機を中心に、アンテナやアンプ、マウント等を組み合わせることによって、航空機向けのARCシリーズ、主に車両に搭載させるVRCシリーズ、携行型のPRCシリーズと名称が変わる。

・AN/PRC-119( )シリーズ
SINCGARSの携行型マンパック構成がPRC-119である。
その中心である送受信機は型式的には二種類存在し、その組み合わせによりバージョンが無番からA~Fまで存在する。

RT-1439/PRC (AN/PRC-119)
日本国内で一番流通しているモデルであり、PRC-119と聞いてイメージする機種である。
分かりやすい特徴としては、AN/PRC-25/77シリーズより横幅が小さく、周波数表示が赤色のセグメント表示の物がRT-1439である。
SINCGARSマンパック構成の一番初めのモデルであり、周波数ホッピング機能とデータ暗号化機能を搭載しているが秘話機能は搭載されていない。



RT-1439/PRC (AN/PRC-119)





RT-1523()~(F) (AN/PRC-119()~(F))
RT-1493に秘話機能を付加したモデルであり、RT-1439と比べRT-1523()~(D)は秘話装置を内蔵した分10㎝程度横幅が大型化した。
RT-1523(E~F)は半導体進化やS/W化により逆に10㎝程度横幅が小型化した。



RT-1523A(AN/PRC-119A)




RT-1523E(AN/PRC-119E)




サイズ感比較

上から、RT-841、RT-1439、RT-1523





左から、RT-1439、RT-841


・AN/PRC-119(RT-1439)主要諸元
周波数 :30〜87.975MHz
チャンネル数 :2,320チャネル
送信出力 :HI 4W / MID 0.25W/ LO 0.05W
サイズ・重量 :9×23×38㎝ 7.8㎏ (参考 RT-841/PRC-77 10×28×29㎝ 6.2㎏)

30〜87.975MHzの広帯域で2,320チャネルをカバーする周波数ホッピング無線機である。
周波数ホッピング機能を使用するには、ローディングデバイスであるMX-18290またはMX-10579のいずれかを使用して、暗号化キーをローディングする必要がある。しかし、暗号化キーを入手するのはほぼ不可能であり実質的にホッピング機能を使用することはできない。
また、音声暗号化(COMSEC)には、秘話装置であるKY-57が必要となるが、こちらも動作状態での入手は不可能である。

無線機にはセルフテスト機能があり、FCTNスイッチをTST位置にすると無線機は自己診断を実行する。テストに合格するとディスプレイにGOODが表示される。それ以外の場合は、以下のFAILメッセージが表示される。

FAIL#  故障内容
1  内部送受信ユニット故障 受信系
2  内部送受信ユニット故障 データ送信系
3  内部送受信ユニット故障 ECCM系
4  内部通信障害
5  秘話規約データなし
6  システム接続不良(SNAP / FHMUX)
7  内部伝送制御不良
8  内部伝送制御不良


マンパック構成

RT-1439 送受信機
AS-3683 ショートアンテナ
AS-4266 ロングアンテナ

H-250  ハンドセット
HRCRD  リモートハンドセット

CY-8523バッテリーボックス
CY-8523Aバッテリーボックス
CY-8523Bバッテリーボックス
CY-8523Cバッテリーボックス

BA-5590/U 使い捨てバッテリー
BB-390 充電式バッテリー
BB-590 充電式バッテリー
BB-2590 充電式バッテリー

キャリーケース

•キーパット種類について


RT-1439、RT-1523に使用するキーパットは数種類あるが、その違いはメンテナンス性である。
このキーパッドは経年により無反応、もしくは連続反応(00000など押した以上に入力される)するなどの不具合が発生する。
これらは分解及び清掃で改善するが、その分解が容易であるか否かが大きな変化である。
初期型では隙間に刃物などを滑り込ませてぶんかいするが、-5、-6といった後期型のタイプはねじ止めに変更されており容易に分解する事が可能である。



A3012985-2 RT-1439用



A3012985-5 RT-1523用



A3012985-6 RT-1493用改良型



※順次更新予定
https://twitter.com/SBI_Corp
  


Posted by メガネさん at 21:52Comments(0)軍用無線機

2021年11月26日

軍用無線機 PRC1077について(2023年4月更新)

2023年4月更新



PRC1077を調達したので簡単にレビューをしたいと思います。
まず、説明文中にAN/PRC-77とRT-841出てきますが、これはアンテナやハンドセット等のマンパックに必要なオプションが全て付いている場合→ AN/PRC-77
何もついていない無線機本体のみ→ RT-841/PRC-77

というように、使う目的や構成、使用場所によって名称が変わります。
今回ご説明するPRC1077は無線機本体のみで、対比としてはRT-841/PRC-77となりますので、その点をご理解いただきお読みいただければと思います。


•基本性能
PRC1077
メーカー:DATRON(旧TRANSWORLD)https://www.dtwc.com/
周波数:30MHz~87.975MHz FM
25KHzステップ
送信出力:LO 0.5W/MED 2W/HI 5W
ノイズ/トーンスケルチ切替可
9chプリセット可能


PRC1077はRT-841/PRC-77と比べ基本性能は全て上回りオプションが全て共通で、かつ軽量です。(RT-841比-1.6kg)
本機は米軍では正式採用されている無線機ではなく、第三国向けの供与・輸出に使われております。
(以下、推測含む)米国はAN/PRC-25・77の時代から同盟国や友好国に対して無線機の供与・輸出を実施していました。
その支援の近代版としてPRC1077が選定され、各国に供与・輸出されている物と考えられます。
本機にNSN(米国の連邦補給システムで調達される品目に対して割り当てられている管理番号)が振り分けられている事もその理由の一つです。

AN/PRC-25・77と完全互換があるため今まで25・77を使用していた国でもスムーズに無線機の近代化がはかれるメリットもあります。


モロッコ軍での使用例

インドネシア軍での使用例
その他、タイ軍、ベトナム軍、アフガニスタン軍などで採用。





内部はRT-841/PRC-77と比べると機械的部分はほぼなく、数個の大型モジュールで構成されています。
細かいところを見ると部品や配線材料は全てMIL規格品ではなく、一部に市販品と同じ物や材料が使用されていることが分かります。

以上の事からPRC1077は、設計当初から主に輸出や供与を目的としていた無線機なのではないかと推測されます。
技術が進歩した今、1960年代設計で機械部品満載のRT-841を作るより、民生品を使うCOTS(商用オフザシェルフ)の観点からも部品や材料の規格を緩和し、内部は基板化したモジュールを数個乗せるだけにすれば安価に友好国支援ができる、そんな思惑があったのではないかと思われます。

米軍に正式採用されていないので『米軍装備』という観点からすると微妙ではありますが、無線機としては軍用としてもアマチュア無線機としても大変使い勝手が良い無線機です。


以下はマニュアルからの引用となります。

●PRC1077の概要
PRC1077は軍用VHF無線機の代表とも言えるRT-841(AN/PRC-77)の代替品として設計された丈夫で高性能な無線機である。
PRC1077はRT-841/PRC-77に比べて送信出力の向上、周波数範囲の拡張、10個のチャンネルプリセット機能を備えている等いくつかの改善点があり、5Wまたは50Wの出力でマンパック、車載、および地上設置の構成が可能である。
PRC1077は既存のVRC-64およびGRC-160車両無線システムに統合することも可能であり、RT-841/PRC-77の構成システムと完全に互換性がある無線機である。


●AN/PRC-25・77のユーザー向けの特記事項
1. PRC1077は、RT-841/PRC-77を使用するシステムで使用するように設計されています。 PRC1077は、すべてのPRCアクセサリと完全に互換性があり、同じバッテリー、アンテナ、ハンドセット、車両マウント、リピーターケーブルなどが使用可能です。

2. PRC1077の本体ケースとバッテリーボックスはRT-841/PRC-77と交換可能です。しかし無線機の内部設計は完全に異なり、内部スペアパーツとサービス手順は同じではありません。

3.  PRC1077はモダンなデザインで、RT-841/PRC-77にはない機能を備えています。 RT-841/PRC-77では次の機能は使用できません。
A.76〜88MHzの範囲の周波数。
B. 25kHzステップ周波数切替機能。(RT-841は50KHzステップ切替)
C.ノイズ作動スケルチ。(RT-841はトーンスケルチのみ搭載)
D.送信、受信周波数の個別設定機能。(RT-841は送受信共に同一周波数)

4. PRC1077と比較すると、RT-841/PRC-77には次のものがありません。
A.10チャンネルのメモリ機能
B.高、中、低の送信出力の切替

●年代による違い

PRC-1077は1990年代に登場してから現在でも生産されている。
動作は同じであるが、内部の仕様が年代と共に変更されており初期型と最新型で本体色や内部仕様が大きく異なる。


上から順に初期型とそれ以降の個体。
明らかな色の違いがある。


こちらは下から順に初期型とそれ以降。
初期型には動作時間計まで取り付いている。
また、近年の型では線材の色まで無くなり徹底的なコストダウンが行われている様子。



オレンジ色が初期型、下の緑が近年の型である。
このようにLEDバックライトの色も違う。

モジュールに関しても内部回路は大きく変わっているものの、互換性は確保されているようである。  

Posted by メガネさん at 23:06Comments(0)軍用無線機