2021年04月02日

年代に合わせたAN/PRC-25、AN/PRC-77選び

年代に合わせたAN/PRC-25、AN/PRC-77選び

「ナム戦装備ではAN/PRC-25(RT-505)とAN/PRC-77(RT-841)のどちらを買えば良いのでしょうか?」
「AN/PRC-25とAN/PRC-77はいつまで使えるのでしょうか?」
といった問い合わせを多くいただきますので、私なりの認識でお答えさせて頂きます。


・そもそもAN/PRC-25、AN/PRC-77とか、RT-505、RT-841とはなんであるのか

 本件については、同じ軍用無線機界隈仲間のチベット工務店様の記事「AN/PRC-77 radio set とは」を参考にして頂ければと思います。
https://infantry199.militaryblog.jp/e774229.html
チベット工務店様には他にも軍用無線機に関する様々な記事がございますので、ご一読頂くとより軍用機器を楽しむ事ができます。


・ナム戦歩兵装備としてのPRCの選定

 ベトナム戦争は1965年~1975年なので、初期の海兵隊装備などであればAN/PRC-10(A)とAN/PRC-25が対象となります。
その後、1968年5月以降からAN/PRC-77の配備が進みますが、PRC-25も1972年頃まで生産されており、両無線機はベトナム戦争期間中を通して生産と配備が並行して行われておりました。
以上の事からナム戦装備であれば、初期はAN/PRC-10、PRC-25、中期以降はAN/PRC-25、PRC-77が使えるという解釈となります。


・AN/PRC-25、PRC-77の年代による違い

 製造年代の見分け方については以前の記事
【AN/PRC-25、PRC-77の製造年代の見分け方&ちょっとライセンス生産品の話しhttps://sdi.militaryblog.jp/e1038875.html
で解説させて頂いておりますが、今回はより細かい部分までお話しさせて頂こうと思います。

今回もウンチクが長くなりますので先に結果から申し上げますと

①本体の色が焦茶色は60~70年代、深緑は70~80年代、艶消し緑は85年以降に製造、もしくは使用されていた個体。
②バッテリーボックスに圧力リリーフ弁が付いている物は72年以降に製造された、もしくは使用されていた個体。
③バッテリーボックス内部に4本のスポンジが付いている物は、80年代以降に製造された、もしくは使用されていた個体。

以上の条件から逆算し、自身の装備に合せた無線機を選べば完璧です。


以降は各項目の詳細になります。

①本体塗装色について

年代に合わせたAN/PRC-25、AN/PRC-77選び
年代に合わせたAN/PRC-25、AN/PRC-77選び
【上90年代、下60年代】

60~70年代  Dark Brown(焦茶色)
70~80年代 Forest Green(深緑)
85年以降 CARC 383 Green(緑)

本体の色が大きく変わるのは85年代以降、全装備に義務付けされたCARC塗装です。
85年以降に製造もしくはオーバーホールされた物は、本体やアンテナも含めて問答無用でCARCにされます。

これは古い機種(AN/PRT-4、PRR-9、AN/PRC-25)でもオーバーホールされれば、写真のように塗り替えられます。
年代に合わせたAN/PRC-25、AN/PRC-77選び
【88年にO/HされてCARC色になったAN/PRT-4】
年代に合わせたAN/PRC-25、AN/PRC-77選び
【内部には元の茶色が残っている】

そのため、色がCARCの物は85年以降に使う分には機種が古くとも正解と言えますが、ナム戦装備として考えた場合は存在しない色の物で微妙という事になります。
 
②バッテリーボックスCY-2562/PRC-25の加工有無について

年代に合わせたAN/PRC-25、AN/PRC-77選び
【写真上が60年代、下が90年代のバッテリーボックス】

色は先程の話の通りですが、大きな違いは赤丸部の圧力リリーフバルブ(逃し弁)の有無です。
年代に合わせたAN/PRC-25、AN/PRC-77選び

この圧力リリーフバルブが付いた経緯は、マグネシウムバッテリーBA-4386/Uは放電時に水素ガスを発生させるため、水素ガスによる爆発やガス逆流による無線機の破損、バッテリー交換時に箱が飛んで負傷するといった事象が多発しました。
年代に合わせたAN/PRC-25、AN/PRC-77選び
【BA-4386/PRC-25 水素を出す憎い奴 80年代製品】

上記事象を受けて1972年9月に緊急改修の通達が出たことにより、1972年以降に生産された物、もしくは使用されていた物に関しては全てリリーフバルブが取り付けられております。
年代に合わせたAN/PRC-25、AN/PRC-77選び

また、80年代に登場したBA-5598/UはBA-4386/Uの半分のサイズな為、バッテリーを支えるために中心部にスポンジが2カ所追加、合計4カ所になっています。

以上が細かい年代の判別方法となります。


年代や内容については様々お話させて頂きましたが、「無線機」として考えた場合はどこで製造されようが、何色だろうが、何が付いていようがどうでもいいとは思います。
しかし、「装備品」としてみた場合、割と単価が高いにも関わらず、色が違う、付いている物が違う、というのはかなり気になる点なのではないかと感じます。

……とは言いましたが!こんな細かい事は気にしていたら買える物も変えなくなってします。
もうとりあえずポーンと適当に買っちゃっていただきまして、RTOをやりながらどうしても気になる部分が出てきたら売り飛ばして、新たに好みの物を買えばいいと思います。
その辺は他の装備品と同じなので、是非とも無線機を手に入れて、みんなでRTOをやりましょう!




同じカテゴリー(軍用無線)の記事画像
軍用無線機 AN/PRC-119について(2023年1月更新)
軍用無線機 PRC1077について(2023年4月更新)
軍用無線機 AN/PRT-4の分解
AN/PRC-27/77のアンテナの立て方について
AN/PRC-77、PRC-25を合法的に使用する為に必要な事
H-138/Uハンドセットみたいなハンドセット その2
同じカテゴリー(軍用無線)の記事
 軍用無線機 AN/PRC-119について(2023年1月更新) (2022-12-20 21:52)
 軍用無線機 PRC1077について(2023年4月更新) (2021-11-26 23:06)
 軍用無線機 AN/PRT-4の分解 (2021-02-01 22:24)
 AN/PRC-27/77のアンテナの立て方について (2020-11-10 19:54)
 AN/PRC-77、PRC-25を合法的に使用する為に必要な事 (2020-11-02 12:33)
 H-138/Uハンドセットみたいなハンドセット その2 (2020-10-14 23:58)

Posted by メガネさん at 21:51│Comments(0)軍用無線
※会員のみコメントを受け付けております、ログインが必要です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。